第22回日本水大賞 2020日本ストックホルム青少年水大賞 
名誉総裁 秋篠宮皇嗣殿下のお言葉 
   

令和2年6月

  1999年に第1回の「日本水大賞」の表彰式が開催されて以来、第21回の昨年まで、毎年この行事に出席をし、受賞者の水にたいする熱心な取り組みに接してまいりました。そして、2002年からは「日本ストックホルム青少年水大賞」の贈賞も加わり、若い世代の人たちが水に関心を持ち、活動や研究を続けている状況にもおおいに感銘を受けました。

  本年の「第22回 日本水大賞 2020日本ストックホルム青少年水大賞」の表彰式は、昨今のCOVID-19の感染拡大に鑑みて中止となり、皆様にお目にかかることが叶わず大変残念なことです。そのことから、今回は、日本水大賞委員会へ提出いただいた活動報告と審査講評、そして日本水大賞委員会委員長と部会長からの説明で、取り組みの一端に触れることができました。各賞の活動は、どれも創意工夫あふれるもので、皆様が平素から水に関わる諸課題について大変力を入れておられる様子が伝わってまいりました。ここに深く敬意を表したく思います。

 このたびのCOVID-19は、多方面、そして広範囲にわたって大きな影響を及ぼしております。受賞をされた皆様の中にも、ご自身の活動もさることながら、さまざまな面で困難な時を過ごしておられることと推察いたします。皆様には、くれぐれもお身体を大切にされることを願っております。そして、少しでも早くこの事態が終息し、世界の人々が平穏な生活に戻れるよう祈念しております。

 さて、水は私たちの暮らしを取り巻く自然の中で、もっとも身近な存在のひとつであります。そして、人類のみならず地球上に存在する生命にとって必要不可欠であるとともに、かけがえのない恵みを与えてくれるものです。そのいっぽうで、昨年も台風15号や19号そして21号に関連した豪雨など、過去に例を見ないほどの台風により各地に甚大な被害がもたらされました。このように水は、恵みを与えるだけではなく、大きな自然災害をもたらすものであることを認識することが重要です。

 今回の日本水大賞には、茨城県常総市根新田町内会の活動が選ばれました。この地区は、2015年9月の豪雨により大きな被害を受けた経験をもとに、「地域コミュニティーが命を守る」との理念の下で「災害犠牲者ゼロ」に向けた活動を進めてきました。この中で、全国に先駆けて災害時の一人一人の避難行動計画である「マイタイムライン」の策定に取り組んでこられました。とくに、活動の一つの柱である出前講座は60回を超えていると伺っています。今後も被災体験地区としての取り組みを、全国に啓発していかれることを期待しております。

 また、2020日本ストックホルム青少年水大賞には、青森県立名久井農業高等学校 Treasure Hunters の活動が選ばれました。西アフリカ・サヘルの半乾燥地で降雨を効率的に利用するため、圃場に水を溜めるための土着技術である「ザイ」と日本の伝統的な技術である「三和土(たたき)」を組み合わせた集水技術の検討を行いました。配合を変え、土壌に栄養分供給ができそうな各種の三和土で実験を行い、現地で調達可能な材料で、耐久性、集水力、土壌流出抑制、 養分供給が高まることを証明しました。今後この技術がサヘルなどの半乾燥地において実践され、乾燥地における農業生産に貢献していくことが期待されます。

 国際連合では、2030年を目指し、「我々の世界を変革する持続可能な開発のための2030 アジェンダ」、いわゆる SDGs を推進しており、「すべての人々の水と衛生の利用可能性と持続可能な管理を確保する」という目標が掲げられております。

 このように、私たちは水から受ける恩恵に感謝し、安全で美しい水循環系の健全化に取り組む必要があります。本賞がその契機のひとつとなり、多くの人々が水を守り、その大切さを継承し、水に関わる様々な問題について考える活動を実践していかれることを願っております。

 おわりに、今回受賞される方々に、心からお祝いを申し上げますとともに、水に関わる皆様の活動が、日本はもとより世界へと発展していくことを祈念し、「第22回日本水大賞 2020日本ストックホルム青少年水大賞」へ寄せる言葉といたします。