第21回日本水大賞 2019日本ストックホルム青少年水大賞 
名誉総裁 秋篠宮皇嗣殿下のお言葉 
   

2019年6月25日

 本日、「第21回日本水大賞 2019 日本ストックホルム青少年水大賞」の表彰式が多くの関係者の出席のもとに開催され、皆様にお会いできましたことを大変うれしく思います。

 水は、私たちの暮らしを取り巻く自然の中で、もっとも身近な存在のひとつであり、人類のみならず、地球上の生命にとって必要不可欠であるとともに、かけがえのない恵みを与えてくれるものです。

 そのいっぽうで、昨年の「平成30年7月豪雨」では、河川の氾濫、浸水被害、土砂災害など、西日本を中心とした全国の広い範囲で甚大な被害が発生いたしました。このように水は、恵みを与えるだけではなく、大きな自然災害をもたらすものであることも忘れてはなりません。

 さて、今回の日本水大賞には、「山陽女子中学校・高等学校 地歴部」の活動が選ばれました。普段は目に見えないことから問題解決が遅れがちである海底ゴミの「見える化」プロジェクトとして、2008年から海底ゴミの調査・回収活動のみならず、住民に対する認知度調査、体験学習会、出前講座、巡回展示会などの多様な情報発信活動を行ってきました。今後も、多様な取り組みとその活動を継続することにより、海底ゴミ問題をはじめ、日常生活と水との関わりを多くの人々が再認識する社会を構築していくことに力を尽くしていただければと思います。

 また、2019 日本ストックホルム青少年水大賞には、「学校法人静岡理工科大学静岡北高等学校 科学部水質班」の活動が選ばれました。本来は廃棄物である茶粕を用いた酸化鉄の3価から2価への還元反応を利用して、1 ボルト程度の低電圧で水の電気分解が起こることを発見し、次世代の燃料として注目されている水素の効率的な製造装置の組み立てを試み、成果をあげました。また、類似のシステムで、水質の汚濁除去に有効な、リン酸イオンの効率的な除去・回収にも成功しています。今後、さらなる研究開発により、実用化されていくことが期待されます。

 国際連合では、2030年を目指し、「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」、いわゆるSDGsを推進しており、「すべての人々の水と衛生の利用可能性と持続可能な管理を確保する」という目標が掲げられています。

 このように、私たちは水から受ける恩恵に感謝し、安全で美しい水循環系の健全化に取り組む必要があります。本賞がその契機のひとつとなり、多くの人々が水を守り、その大切さを継承し、水に関わる様々な問題について考える活動をしていかれることを願っております。

 おわりに、本日受賞される方々に、心からお祝いを申し上げますとともに、水に関わる皆様の活動が、日本はもとより世界へと発展していくことを祈念し、私の挨拶といたします。