川のQ&A  

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5.大雨で川の水が増えたとき、そこに住んでいる生き物(魚や虫など)は、どうして過ごしているのか?

 川の水が増えても,水辺に植えている木や草のまわりや川底の石の下など,水の流れのゆるやかな場所があります。魚や水の中に住んでいる虫は.そのような場所で川の水が少なくなるのを待っています。

 川の中流域のある限られた場所ひとつをとっても.そこは白波を立てて流れる早瀬や,やや単調な流れの平瀬,よどんだ深い淵があります。また,水際の部分には開放的な礫の川原や凸凹のある岩盤,平板的なコンクリート護岸.複雑に積まれた異形ブロック,あるいはヨシなどの水草帯.ヤナギ林が水辺を覆うところなど,様々な環境があります。

 一般に、魚が流れのなかで泳ぐ力(「遊泳力」)は.アユ.ウグイなどの流水性の魚に比べてフナ.タナゴ類などの緩流性の魚のほうが弱く.また.大型魚に比べて小型魚のほうが弱いです。当然ながら,成魚に比べると生まれてまもない仔魚.稚魚の遊泳力はとても弱くなります。洪水による影響をより多く受けやすいのは.このような遊泳力の弱い魚であり,それでもアユやヨシノポリのような「回遊魚」の場合は.たとえ下流に流されても再びもとの場所まで遡上してくることが可能ですが,仔魚.稚魚などがもとの生息地に戻るのはほとんど不可能です。

 洪水がおこると,それまで河川内の様々な環境を住みかとしていた魚の多くは,流されないように少しでも流れのゆるやかな場所を求めて一時的に避難を開始します。 その際.生息地の近くに避難場所となりうる適当な環境があるかどうかが重要な問題となります。橋脚の裏側や大きな岩の陰.水際のわん曲した入り江.支流の小川や用水路.異形ブロックの隙間,ヨシ帯などの水草のなか.さらに平常時は陸地であるが洪水時には冠水する高水敷の樹木の陰や水たまりが避難場所としてあげられます。

 このような魚が避難できる環境が多く存在する川とは.必ずしも自然状態に近い未改修の川とは限りません。むしろ.たとえ河川改修などの人手が加わっていたとしても.流路形態が変化に富み.水際部や高水敷に複雑で多様な環境をもっている川には良好な避難場所が数多くあります。近年.各地で行われている「多自然工法」による河川改修はそのような川づくりをめざしています。