会長就任ご挨拶 

写真「甲村会長」

公益社団法人 日本河川協会会長
甲 村 謙 友
(こうむら けんゆう)


 この度、6月2日の日本河川協会の社員総会をもって24年間本協会の発展に努められた松田会長が退任され、総会後の理事会において会長に選任されました甲村謙友です。
 
松田前会長におかれては、永年にわたる協会への貢献、特に、ここ2年間余りの新型コロナウイルス感染症蔓延のなか、テレワーク、WEBによる講習会・研修会・発表会等の新たな業務運営方式を導入され、未曾有の社会環境下にあって協会の運営や会員サービスに大きな貢献をなされたことに感謝申し上げます。

 さて、新型コロナウイルス感染症の蔓延も未曾有ですが、それ以前から近年、未曾有の大雨や河川氾濫が頻発するようになってきています。前者の原因は未解明ですが、後者の原因は人為的な温室効果ガス増加に伴う地球温暖化による気候変動であることが解明されています。地球温暖化による気候変動に対しては、温室効果ガス排出抑制や温室効果ガス吸収による緩和策(mitigation)と、変化していく気候のもとで悪影響を最小限に抑える適応策(adaptation)を車の両輪で実施していくことが、「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC:Intergovernmental Panel on Climate Change)を始めとして世界的な合意となっています。我が国においては、従来は緩和策が注目を浴びてきましたが、2018年に気候変動適応法が制定され、各分野が一丸となって適応策を強力に推進していくことが求められています。
 水に関する適応策としては、気候変動を踏まえた治水計画の見直し・実施、河川での対策に加えて流域・氾濫域におけるあらゆる関係者との協同によるハード・ソフト対策を含めた流域治水の推進、流域治水におけるグリーンインフラの活用等を始めとして、水害・土砂災害・高潮高波・水資源・水環境分野にわたって対策を実施していくこととされています。特に流域治水の実施にあたっては、昨年「流域治水関連法」が制定され、流域での対策として雨水の貯留浸透機能の増大、氾濫域での対策として水害リスク情報の充実、土地利用規制誘導、住宅建築物の耐水化、避難体制の整備、事業継続計画の策定、被災地支援体制の強化等、すべての個人・団体・企業に関心を持っていただき、協力を得ていく必要があります。

 日本河川協会は、月刊誌「河川」、会報「河川文化」、メールマガジン、各種研修会・講習会、HP等による各種調査・技術情報の提供等を通して多くの人に河川や水への関心を深めていただき、洪水や渇水など災害への対応にご協力いただくとともに、地形・水質・生物・物質循環等の河川や水の持つ多面的機能を学び楽しんでいただくことを目標としております。
 会員の皆様におかれましても引き続き協会活動にご支援を賜りますとともに、お知り合いの個人・団体・企業等にもお声がけいただき、より多くの方々が河川や水に関心を持ってかかわっていただけるようお願いいたします。

令和4年6月吉日